2012年07月29日

投与計画

入院患者さんにMRSAの注射の指示がありました。
この薬剤は、年齢、体重、腎機能により血中濃度が変化し、過量投与すると重篤な副作用が発症します。
この薬剤の適正使用は、なかなか大変です。
この機会に少し、整理してみました。
(本音は、私がきちんと理解できてなかった反省の記録です・・・・。ほとんどメモかつ専門分野なので適当にお願いします)

処方があったのは塩酸バンコマイシン注です。

●使用の是非
MRSAは検出されたか、感受性はあるか
感染か保菌かを区別し感染症のみに使用
保菌とは・・・単に菌が定着しているだけで全身や局所の感染徴候が見られない
カテーテル挿入は抜去する。
臓器移行性のよいものを選ぶ。

●分類
グリコペプチド系
●作用機序
細菌の細胞壁合成阻害。起炎菌との接触時間に依存して殺菌力を発揮する。
PAE(Post Antibiotic Effect)効果あり 静菌作用 
PAEは通常、抗菌薬がMIC以上の濃度で最近に接触した場合に、抗菌薬の血中濃度が
MIC以下あるいは消失しても持続して見られる細菌の増殖抑制効果。
●PK/PD
時間依存性
Timeabove MIC(菌のMIC以上の濃度を保つ時間)が長いほどよい。1日の40%以上を維持させる
●投与計画
年齢、体重、腎機能により血中濃度が変化する。
腎機能低下時は、投与量もしくは投与間隔を調節する。
→投与量減量法より投与間隔延長法のほうがベター
投与量減量法だと濃度が上がるまで時間がかかる。1回量が半端。目標ピークまで到達しない。
 負荷量が絶対必要。
①投与量、投与間隔の決定
*平均血中濃度を活用する方法
Dose(mg/day)=目標平均血中濃度(mg/L)×Ccr(ml/min)
例 eGFR40ml/minで目標平均血中濃度が15mg/Lのときは
15×40=600mg/day
例 eGFR40ml/minで目標平均血中濃度が20mg/Lのときは
20×40=800mg/day

750mg/dayとしたとき
   750mgを24時間ごと→1000mg(0.5g1V×2)を36時間ごと(1バイアル0.5gのため750mgは半端で作業が煩雑)

他のも多数決定方法はあり。

投与に際しては、0.5g1Vあたり60分以上時間をかけて点滴静注する。
 急速なワンショット静注や短時間での点滴静注を行うと、レッドネック症候群、血圧低下などの副作用が発現する可能性あり。
②血中濃度測定の依頼
投与計画にて開始するが、本当にそれで効果があるか、安全性は確保されているかを追跡する。
採血のタイミング
  点滴開始3日後のトラフとピーク
トラフ→点滴開始直前 ピーク→点滴終了後1時間
トラフで、安全性をピークで有効性を確認する。
トラフ濃度10μg/mL
ピーク濃度25~40μg/mL

例 1回1.0g(0.5gを2V)、11時に点滴開始する場合
     トラフ 点滴開始直前の採血11時
     ピーク 点滴終了後1時間 採血は14時(点滴は2時間かかるため)
posted by さちこ at 12:20| Comment(1) | TrackBack(0) | 医療 | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
久しぶりに過去記事を見た・・・。

追記として残しておく

抗菌薬TDM臨床実践ガイドライン2022 by日本化学療法学会/日本TDM学会(バンコマイシン)によると
・PKパラメーターを従来のトラフ値からAUCに変更した。
・AUC/MIC400-600を目標(MICを1μg/mLとしてAUC-guided dosing)
・初回は25-30mg/kgを12時間毎1日2回
・維持用量は腎機能による。(ノモグラムあり、TDMソフトウェアPATあり、その他指標あり)
Posted by さちこ at 2024年04月29日 12:40
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